あなたが作るおいしいごはん【完】

『……親父の転勤で九州に引っ越して
意外とすぐに俺は馴染めたけど
オフクロは馴染めなかったみたいで
親父や俺に言えずに
相当我慢してたのがたたって
とうとう俺が中学ん時に
身体も心も病んでしまって…。』

コーヒーを啜りながら

恭君は窓に視線を向けながら

『…病んでしまってから初めて
オフクロが引っ越しに
不満だった事を知らされて
結局、中学卒業と同時に
オフクロと俺だけが
祖母の家を頼ってこっちに戻ってきて
高校も九州で決まってたけど
こっちの高校に入学した。
…進学したかったけど今は
レストランや居酒屋の
バイトを掛け持ちしてる。』

そう言って過去を語り始めた。

そして

『…あのビルにいたのは
俺、料理好きって言うか…。
オフクロが病んでしまってから
俺が代わりに
時々料理するようになってさ
何気なく見てたTVで
押谷和亮さんを知ってから
あの人の料理教室を聞いて
一度習ってみたくなったんだよ。

…そしたら今回やっと
20代クラスの受講枠に入れたから
さっき受講申請の書類を
事務所に行って出してきたんだ。』

と、恭君は驚くべき事実を口にした。

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