あなたが作るおいしいごはん【完】
『…ごめんなさいね。
断られるだろうとは思ってたわ。』
寛子さんは
残念そうな表情を浮かべながら
『…随分会わない間に
可愛らしいお嬢さんになられたし
その左手の指輪もかなり高価そうだから
そう言うお相手が
いらっしゃるんじゃないかと
薄々感じていたわ。』
と、私の左手薬指を見つめながら
ゆっくり口を開いた。
『…でもね…私は
小さかった頃の萌絵ちゃんを
本当の娘みたいに思ってきた。
将来は恭平と結婚して欲しくて
娘になって欲しいと思ってた。
だから、夫の転勤の話が出た時
“あなたは単身赴任して欲しい。”
って夫に伝えたの。』
『…はっ!?それ…本当かよ!!
親父はそんな事言ってなかったぜ。』
恭君の驚きに寛子さんは頷いた。
『…本当よ…ハッキリ言ったわ。
恭平と萌絵ちゃんを
将来結婚させたいから
私と恭平はあの家に残りたいって…。
離れ離れにしたら
2人が将来結婚出来ない。
萌絵ちゃんと
本当の親子になれないって…。
だけど、却下されてしまって
何度頼んでも聞く耳持ってくれなくて
勝手に売却手続きまで…。
だから、私は
……浅倉さんに直談判にも言ったわ。』
寛子さんは衝撃の事実を口にした。