あなたが作るおいしいごはん【完】
「…はっ、初恋!?」
目を見開いた私に
『…ああ、俺の初恋だったよ。
引っ越し決まった時
萌絵ちゃんと離れる事は
確かにショックだったけど
小学生だったから
どうする事も出来なくて…。
…だけど、オフクロが
引っ越しに反対してたとか
萌絵ちゃんのお父さんに直談判とかは
…正直やり過ぎだと思う。
ひかれて当然だと思う…。
本当にごめん…迷惑かけて。』
ひたすら謝る恭君に
「………。」
私は何も言えなかった。
そっか…初恋か。
私だって、恭君は幼馴染みだったけど
初めて憧れた男の子だったから
もしかしたらあの幼少期に
薮嶋家の…恭君家の
引っ越しがなかったら
私と恭君は想いが通じていた?
もしかしたら今付き合っていた?
寛子さんは病んだりしなかった?
私は元カレと出会わずに
傷つく事もなかった?
寛子さんの希望のように
私は恭君と結婚に向かってた?
…そして
彼…カズさん…押谷和亮と
お見合いする事はなかった?
婚約して同棲する事はなかった?
政略結婚に向かう事はなかった?
父の名前ばかり言う彼に
複雑な感情を抱く事なく
嫉妬する事はなかった?