あなたが作るおいしいごはん【完】
…でも…でも。
やっぱり思い浮かぶ彼の顔。
…お見合いや結納の席で
私の好きな物を用意してくれた
気回しの良さ。
…私に優しく微笑んでくれる表情。
…私においしいご飯を作ってくれる
温もりと優しさ。
…食材を優しく扱う繊細な指に
真剣ながらも優しい眼差し。
…生徒さんに優しく指導している姿。
…アシスタントに厳しくも優しい姿。
…苦労をして掴んだ今の地位。
…辛いと言わず、弱音を吐かず
寧ろ楽しみながら、今の職業を
心から愛している姿。
…私のアルバイトの為に
田宮さんやレナ店長に
頭を下げてくれた優しさ。
…私の頬を撫でてくれた手指の温もり。
…私の頭を撫でてくれる優しい手つき。
…私にキスを落とした唇の温もり。
…ミレイさんに嫉妬した時に
私を抱き締めた腕の温もり。
…やっぱり私は
押谷和亮が好きなんだ。
だけど、私は彼を裏切ってしまった。
嘘をついて、ここまで来てしまった。
だから、私は一方的に
恭君も寛子さんも責められない。