あなたが作るおいしいごはん【完】
恐怖と痛みの果てに
***
彼の事務所に寄らずに直帰を続け
薮嶋恭平親子との接触を避け続けて
数日が経過した。
相変わらず薮嶋さんからは
『…あの時はごめん。
オフクロが謝りたいと言っている。』
『…直接謝罪したいから
家にまた来て欲しい。
ダメなら別の場所でもいいから。』
『…“結婚の話は水に流す”と
オフクロが言ってるし
もう二度と言わないから
これからも話し相手として
会ってやって貰えないか?』
『…萌絵ちゃんは
やっぱりあの先生が好きなの?』
『…どうして、ビルに来ないの?』
『…連絡下さい。』
『…無視しないで…謝るから。』
などの内容が含まれたメールが
頻繁に届いていた。
「…ごめんなさい。もう会えません。」
そう一度だけメールを送って以来
頻繁に送られてくる内容には
どれも返信出来ずにいた。
それでも届くメールに
私は追い込まれかけていた。