あなたが作るおいしいごはん【完】
…どうして、私はこの日
インターホンが鳴った時に
モニターを確認しなかったのか…。
どうして、靖英が帰ってきたんだと
勝手にそう思い込んだのか…。
靖英は鍵があるのだから
インターホンを鳴らさずとも
家に入る事が出来るのに
なぜか私はこの時
インターホンを鳴らしたのが
靖英だと思い込んでしまっていた。
…あっ、帰って来たんだね。
私は立ち上がると
玄関に向かって歩き出し
扉を開けてしまった。
その瞬間…。
「………えっ…嘘。
…どう……して….…ここに。」
私は扉の向こうの相手を見るなり
おどろきのあまり目を見開き
言葉がスラスラ出てこなかった。
『…やっと…会えた。
俺…凄く会いたかったんだ…。』
そう私に言う
扉の向こうにいた相手とは
ずっと彼…カズさんのビルに行かずに
直帰する事で会う事を避け続けていて
メールもされても無視し続けていた
今の私が今一番で会いたくなくて
顔を見るのも怖かった
……薮嶋恭平だった。