あなたが作るおいしいごはん【完】
仲裁のキッカケは
父が秀和社長の誘いで
押谷家を訪ねた際に
ちょうど塾から帰宅した彼と
秀和社長の様子が変わり
進路の話がヒートアップして
口論が始まった時だった。
父は最初酒を飲みながら
2人の口論を聞いていたが
やがて間に入って辞めさせて
『…2人の言い分はわかったが
このままでは平行線のままだ。
親子の口論もここまでくると
他人から見てもハッキリ言って辛い。
お互いに妥協し合わないといけない。』
そう言って口を開いた。
『…まずは秀和(社長)君。
君が一代で築き上げたからこそ
既に君の身体のような存在になっている
あの会社を息子に継いで欲しい
守り続けて欲しいと思う気持ちは
良くわかる。
ましてや
経営危機を乗り越えたからこそ
なおさら守りたい気持ちがあるのは
君から相談を受ける度に
ヒシヒシと伝わってくる。
だから君が
和亮君の将来の夢に賛成出来ずに
口論に至るのもわからなくはない。』
父は一口お酒を口に含むと
『…しかしだね。』
と、話を続けた。