あなたが作るおいしいごはん【完】

『…しかしだね
拒否の意向を示している和亮君に
無理やり継がせても
会社はいずれ愛と光と魅力を失い
築き上げてきたモノ全てが
廃れていく事は確実になるよ。』

『……はっ!?廃れる?』

目を見開く秀和社長と

黙ったままの彼に父は話を続けた。

『…ああ、廃れるよ。確実に…。
意志がないのだからね…。
それに和亮君は君に似て優しい子だ。
勉強で忙しいのに
娘の萌絵や息子の靖英(やすひで)を
進んで預かって、面倒を見てくれて
昼食を食べさせてくれている事にも
僕はとても感謝してるし
あの子達も
“カズ兄ちゃんのご飯はおいしい。”
と良く話してるよ。』

父は一瞬だけ笑みを含ませた後

『だから、和亮君は父親である君に
この事を正直に打ち明ける事に対して
凄く勇気がいったと思うし
こうして、君と口論になっても
意志を曲げないのだから
相当の決意を抱えて
その夢を叶える事を
貫きたいんじゃないかな?』

そうだろ?と

父に視線を向けられた彼は

静かに頷いた。


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