あなたが作るおいしいごはん【完】
『…一人にさせないから。』
『…そばにいるから。』
彼の言葉と彼の優しい手が嬉しい。
私は今弱っているから
そんな優しい言葉をかけられると
彼が私を好きでいてくれていると
自惚れてしまいそうになる…。
…あっ、でも。
『…今日はここに泊まる。』
『…明日の午後には退院。』
って、今言ってたよね?
…それって…あれ?
私の中で疑問が浮かんだ。
「…カズ…さん…お仕事はいいの?
明日って…金曜日だよ?
シニアクラスの…開講日じゃないの?
カズさんが…休んじゃったら
生徒さんや
アシスタントの速水さん達が……。」
すると
『…萌絵の事だから言うと思った。』
彼は握っていた私の手をさすると
『…萌絵は最近ビルに来てなかったから
知らなかったかもしれないけど…。
来春、速水は俺の元を巣立って、
新天地で教室を開講するのは
知ってるだろ?
だから、その予行演習を兼ねて
今週は速水が俺の代わりに
生徒を指導している。
その間俺は
速水をチェックしながら
アシスタントに回ってたんだ。』
と、私が知らなかった事実を口にした。