あなたが作るおいしいごはん【完】
彼の瞳から涙が溢れた。
実の父親の秀和社長が
理解してくれなかった事を
私の父靖雄が理解してくれた事に
張り詰めていた緊張感が切れたらしい。
その涙と頷きを見た父は
『…僕もね、正直言えば
萌絵や靖英が
私のプロデュースした店の何処かに
就職してくれると嬉しいとは思ってる。
だけどそれを“七光り”と
受け捉える人もいないとは限らないから
それを嫌って就職したくないのなら
それはそれでいいと思うし
受け止めるつもりでいる。』
そう言って
困惑顔の秀和社長に視線を戻した。
『…それにね、僕は思うには
これから先…きっと
男性が料理をする事が
珍しい事ではないと思える時代が
訪れると思うんだ。
和亮君のように
小さい頃から料理好きな人もいれば
した事なくてもやってみようと思う人。
或いは
夫婦共働きや出産、育児等の理由で
必要に迫られてせざるを得ない人。
そんな人はこれから先
どんどん増えていくはずだ。』