あなたが作るおいしいごはん【完】

『…そんな時に和亮君の存在が
料理を通して
世の中の男性のお手本となって
希望や意欲や笑顔を
与えるキッカケになれば
和亮君を育てた秀和君の評価も
当然あがっていくはずだし
継がせなかった事が正しかったと
思える日がいつか訪れるはずだよ。』

『…おじさん。』

彼の瞳から次々と涙が溢れた。


『…それに、どうしても
会社を身内に継がせたいのなら
和亮君じゃなくても
既に入社している君の甥っ子の
宏道(ひろみち)君と宏成(ひろなり)君の
双子の兄弟だっているし
身内じゃなくても
君の意志を受け継ぎたいと
名乗り出る人もいるかもしれないから
継ぎたいとやる気のある人にさせれば
会社は愛も光も魅力も失わずに済むし
廃れはしない。
だから、和亮君の将来の夢を
父親の押谷秀和として
応援して見守ってやってはどうだ?』


黙って話を聞いていた

秀和社長はやがて一つため息を吐き

『…わかった。
会社を継がせるのは諦める。
やりたい夢を叶えるといい。』

と、彼の意志を尊重する意向を示した。

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