あなたが作るおいしいごはん【完】

「…私は…薮嶋恭平に叩かれて
襲われそうになって凄く怖かった時
和亮さんの顔が浮かんだ…。

裏切っておきながら、厚かましいけど
例えこの先私は
和亮さんに愛されなくてもいいから
偽りの『好き。』でもいいから
父への恩義に
魂を売り払っていてもいいから
あなたがそばにいてくれる限り
このまま一緒にいたいと思った。
あなたが作るおいしいご飯を
食べ続けたいと思った。」

『…萌絵…俺は…。』

彼が何か言いたげなのを遮り

彼のシャツの全てのボタンを外した私は

ドキドキしながら両手で前を開けた瞬間

「……!!」

私は驚きで目を見開いた。


初めて私の前で露わになった彼の体は

見惚れるほど逞しくて

……眩しいほど美しかった。


「……綺麗。」


私はその胸板にそっと手を伸ばすと


『…萌絵…お願いだからやめてくれ。
これ以上触れられると
俺は理性を保てなくなる。
ただでさえ萌絵は
今体も心も辛い時だから
俺の身勝手な欲望の所為で
無理をさせたくない…。

…それに、俺は
今萌絵を抱いてしまったら
約束した事すら守れない
ダメな男になってしまう。』

そう言って彼は

辛そうな表情で私を見た。
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