あなたが作るおいしいごはん【完】

…やっぱりまだ何だか怖い。

私は思わず巻いていたバスタオルを

掴んだままキュッと目を瞑った。


すると突然私の肩に

くすぐったいようで

温かく優しい感触がした。


…何だろう。

そっと目を開けると

彼が私の腰に手を回して

優しく引き寄せながら

鬱血している私の右肩に

何度もキスを落としていた。


「…和亮…さん?」

彼の名前を呟くように呼ぶと

『…この痕が消える日まで
いや…萌絵の頭の中から
あの時の恐怖心が消える日まで
俺はいつでも何度でも
萌絵の肩にこうして
消毒代わりのキスをしてあげるよ。

…だから決して一人で泣いたり
一人で目を瞑ったりしないで欲しい。
一人で怯えないで欲しい…。

萌絵には俺がついてるから
一緒に乗り越えていこう…。』

と言って

私にチラリと視線を向けた後

左肩にも同様にキスを落とした彼は

『…綺麗だよ。
萌絵のハジメテ…ありがとう。
優しく抱きたいけど
痛かったら我慢せずに言って欲しい。』

そう耳元で囁いた後

『…愛してるよ。』の言葉と共に

彼は優しく私の唇を塞ぐと

この時間の始まりを告げるような

《チョコレート》以上に甘いキスを

私に落とした。



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