あなたが作るおいしいごはん【完】
エレベーターを降りて
いつものように事務所に向かって歩く。
廊下から彼のスタジオの窓を
チラリと見ながら通り過ぎるのが
私の日課でもある。
ごくたまに
彼が廊下に出ている時もあるから
今日はそうだったらいいのに…。と
思ったりもする。
話せるタイミングならば彼に話せるし
無理なら
“教室済むまで待ってるね。”と
待たせて貰っている日のように
彼のお仕事が終わるのを
事務所で待たせて貰う事も出来る。
吐いてばかりで
胃の中は空っぽだけど
今は何かまだ食欲もなくて
お腹も空かない。
持参しているお水だけで
待っていられるし
帰宅してから彼と一緒なら
もしかして食べられるかもしれない。
とにかく
彼の顔が今は一目でも見たかった私は
話す緊張と彼の反応の不安を
抱えながら、廊下を歩いた。
残念ながら廊下に彼はいなかった。
スタジオで速水くん達と一緒かな?
お仕事前のお邪魔はいけないけど
少しだけでも早く顔が見たい…。
そう思いながら私は
廊下から窓をチラリと覗いた。