あなたが作るおいしいごはん【完】
『………。』
彼の言葉に
秀和社長は一瞬沈黙した後
静かに口を開いた。
『…わかった…そうすればいい。
役に立つ事なら何でも教えてやる。
だから
会社を継がないと決意したからには
何が何でも和亮…お前は夢を叶えろ。
…あと…その料理教室を開く時は
必ず私に相談する事と
私の会社が所有するビルにする事。
…その時は…和亮が教えやすく
生徒も集まりやすくて通いやすい
条件のいい場所を必ず
私が用意してやるから…。
………わかったな?』
『…親父。』
再び彼の瞳から涙が溢れた。
『…男が泣くな。』
そう言う秀和社長の目からも
うっすらと涙が滲んでいた。
『…和亮君良かったな。』
涙が溢れながら何度も頷く彼の肩に
手を置く父も感動のあまり
今でも泣きそうな顔になっていた。
…険悪な親子喧嘩はこの日
父靖雄のアドバイスにより
条件付きながらも彼は
料理研究家への夢を諦めずに
邁進していく事を正式に許された。