あなたが作るおいしいごはん【完】

ミレイさんがすぐ近くにいるのに

彼は私の元へ駆け寄って

私に目線を合わせてくれた。


本当は嬉しいのに

ミレイさんの話の真実を

確かめるのが怖い。


私だってこの愛を失うのが怖い。

この手の温もりを失うのが怖い。


たった一言でいいから

あなたの口から聞きたい。


“ミレイさんのお腹の子どもの

父親は……俺じゃない。”って…。

………そう言って欲しい。


『…萌絵?』

心配そうに私を見つめる彼に

『…先生…あの、すいません。
お義兄さんと私の会話の事で
その…萌絵さんが…。』

近くにいたミレイさんが

横から彼に説明しようとした時

「……嫌だよ……和亮さん。
私を捨てたりしないで…。
『ずっとそばにいる。』って
約束したじゃない……。

……どこにもいかないでっ…!!」

ミレイさんが何かを言おうとしたのを

遮るように私は

彼のコックシャツに顔を埋めると

『…萌絵?』

戸惑いの声を出しながら

私の名前を呼ぶ彼にこう言った。





「…私は和亮さんだけを愛してる。
お願いだから…一生そばにいて。
私と赤ちゃんのそばにいて……。」









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