あなたが作るおいしいごはん【完】
『…速水と瀬名と菊田。
悪いけど先に始めてて欲しい。
すぐ行くから!!』
彼は立ち上がって私も立たせると
さっきとは違う真面目な表情になり
近くにいた速水君達に
彼が戻るまでの簡単な指示を出した。
『…はい、先生…了解しました。』
『…わかりました…失礼します。』
『…失礼します。』
彼の指示を受け
今日は水色のコックシャツに
濃い緑色のエプロン姿の速水君達は
仕事モードに切り替わると
私達に一礼して
生徒さん達が待つスタジオの中へと
急いで戻って行った。
『……悪阻で吐いてたんだな。
今は気分…どう?食べられそう?
冷蔵庫に《鮭と玉ねぎのマリネ》と
《絹ごし豆腐の中華あんかけ》を
入れておいたけど食べるか?
萌絵に持って帰ってあげようと
思って取っておいたんだ…。
《マリネ》は酸味があるから
食べやすいかなと思うけど
食べられそうなだけ食べたらいいし
冷蔵庫に出版社の担当さんから頂いた
《グレープフルーツゼリー》もあるから
俺が終わるまで、待ってられそうなら
待っててくれるか?』
彼は静まり返った廊下で
体調を気遣うように
彼は優しく私に話しかけた。