あなたが作るおいしいごはん【完】
***
約束の月曜日…私の誕生日当日。
彼と私は婚姻届を提出する為
彼の運転する車で
市役所へ向かう事になった。
先週、彼と一緒に
レナ店長がお勧めする産婦人科で
内診を受けた。
『…おめでとうございます。
妊娠3ヶ月…9週目に入られる頃ですね。
赤ちゃんの心臓も元気に動いてます。
来週も診察を受けて頂いて順調なら
その次からは4週間毎になります。
安定期まではくれぐれも体には
気をつけて下さいね。』
ドキドキしたけど
ベテラン女性医師から
嬉しい結果を聞く事が出来た。
マンションへ戻った後
『…ありがとう…萌絵。
俺をパパにしてくれてありがとう。』
と、彼が満面の笑みで
何度もお礼を言ってくれた時
嬉しくて泣いてしまった。
その日、彼が作ってくれた
《どら焼き》は悪阻で辛いはずの
体に甘く優しく溶けていき
赤ちゃんもきっとパパになる彼が作る
この味がわかるんだと思うと
嬉しくなってまた泣きそうになった。
***
『…着いたよ。』
彼に連れて行かれた場所は
いつものビルだった。
あれ?別の階へ用事?と思いきや
案内された場所は、やはりいつもの
……彼のキッチンスタジオだった。