あなたが作るおいしいごはん【完】
「………?」
どうしてここなのかがわからない。
いつも来ている場所なのに
ここに私を連れてくるなんて
何があるんだろう…?
今日は田宮さんは休みだから
彼は私の肩を抱いて支えながら
エレベーターを一緒に降りて
警備室から鍵を受け取ると
いつもの事務所に入る鍵ではなく
普段“女性入室禁止”で
私ですら入る事が許されないはずの
…キッチンスタジオの出入口の鍵穴に
鍵を差し込み、ガチャガチャと開けた。
そして、その扉を開けると
『…萌絵…さあどうぞ…。
今まで入れてあげられなくて
本当にごめんね…。
でも、今日から
女性の入室は萌絵だけOKだよ。
さあ…どうぞ…この中に…入って。』
と言って
私に中に入るように勧めた。
今まで入室禁止だったはずの部屋に
足を踏み入れるなんて
緊張で足が竦みそうになったけど
深呼吸すると
「…お邪魔します。」
と、一礼してから
私は彼のキッチンスタジオ内へと
一歩足を踏み入れた。