あなたが作るおいしいごはん【完】

『…座って。
立ちっぱなしは疲れちゃうからね。』

彼は部屋の角に積まれていた

椅子を取り出して調理台の近くに置くと

私を座らせた。


そして彼は私の前に立ち

調理スペースを優しく撫でると

私に視線を向けながら尋ねた。

『…どう?
初めてこの場所に入った感想は?』


私はにっこり微笑んだ。

「…凄く素敵。
明るくて、綺麗でピカピカで…。
まるでモデルルームに来たみたいだね。

リピーターが多いのも
再び受講したいと思うようになるのも
いつも通り過ぎる度に
あなたが笑顔で、生徒さん達も笑顔で
和気あいあいとした雰囲気になるのも
凄くわかる気がするし
この場所にいると私まで何だか
今凄く笑みが溢れそうになって
温かい気持ちになれるから不思議…。

…ありがとう…神聖な場所に
私をこうして入れてくれて…。」

私は彼に軽くお辞儀をした後

「…でも…ここは“女性入室禁止”なのに
私を入れてしまっていいの!?
肝心の和亮さんが
ルールを破っちゃって大丈夫なの!?」

と、すぐに頭をあげて

彼に大事な事を聞き返した。
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