あなたが作るおいしいごはん【完】

俺の趣味は昔から料理だった。

幼児期〜小学校の高学年まで

我が家に通って来ていた

家政婦の山池さんの影響だった。


俺は山池さんが

親父と俺の夕食を

作ってくれている風景を

近くで見ているうちに

『…ぼっちゃんも手伝いますか?』

と、声をかけて貰えて

出来る範囲のお手伝いを

させて貰えたのがキッカケだった。


小学校高学年になり

山池さんが家政婦を引退したのを機に

親父は家政婦を雇うのを辞めて

『…火の元など
責任もって気をつけるなら
別にやっても構わない。』

と、俺にメシ作りを任せると

言ってくれた。


塾にも通っていたから

毎日作るのが難しかったりすると

何か一品だけ野菜を加えれば出来る

市販の具材入り惣菜ソースで

焼くだけとか炒めるだけのおかずや

《きんぴら》や《ひじき》など

冷蔵庫で2〜3日日持ち可能な

作り置きおかずが続いたりもしたが

親父も文句を言わずに食べてくれて

俺も次はあれを作ろうか

いや、あれを作ってみようかと

意欲は止まる事を知らなかった。


…ただ、まだこの頃も

料理が職業に結びつくとは

全然思ってはいなかった。


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