あなたが作るおいしいごはん【完】

「…おいしい…カズ兄ちゃん。」

一口、二口食べ進める彼女の顔は

朝は寂しそうで表情もかたかったけど

みるみる笑顔へと変わっていき

「…おいしい。」の言葉を

繰り返し言ってくれた。

俺も《海老ピラフ》を口に入れると

『…おっ、美味い。』

我ながら上手くいった事に喜ぶと

「…カズ兄ちゃん。
この《トマト》は冷たくて甘いね。」

彼女が《トマト》を指差した。

『…これね
《デザートトマト》って言ってね
俺が萌絵ちゃんぐらいの時
トマトが苦手だったから
家政婦さんが作ってくれたんだよ。』

そう…これの作り方は

至って簡単だけど

トマトの酸味が抜けて

まるでデザートみたいに

甘く食べやすくなって

俺のトマト嫌いは段々克服出来て

次第に普通に食べられるようにまで

進歩したキッカケとなった

メニューでもある。

「…本当に甘くておいしいね。
私これ、好きになった!!」

その言葉を聞いた時

『…そ、そうか?
そんな風に言って貰えると
作った甲斐あったよ…。』

予想外ながらもトマトを含めて

彼女の幼い褒め言葉は尽きなかった。



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