あなたが作るおいしいごはん【完】

彼女は俺のシャツを引っ張ったまま


「…萌絵ね、カズ兄ちゃんのご飯は
凄くおいしいなあって思うの。

男の人なのに、女の人みたいに
こんなにたくさんおいしいご飯を
作れるのって凄いって思うの。

お料理のTV見てた時
カズ兄ちゃんは
お料理の先生になれると思ったし
たくさんの男の人に
お料理を教えてあげたら
作る人も食べる人も
みんな幸せになれるのに…。
って思うの。」

そう言って俺の顔をジッと見た。


本当に小学校1年生かと

聞きたくなるくらい

彼女の言葉は大人びていた。


でもその瞬間


『………!!』 


今までぼんやりしていたはずの

俺の将来が単純ながらも

段々と晴れていくのを感じ始めた。

彼女の言葉が胸に響いた。


何なんだこの気持ちは……。

何だか感じた事のない清々しさ…。


そうか…俺は…。

自分の胸に手を当ててみた。


ずっと自分が何をしたくて

何を目指したいのか

答えがなかなか見つからなかった。

親父の敷かれたレールに

迷いが出てしまい

このままでいいのかわからなかった。



でも今何となく答えが見つかりそうな

そんな気がする……。











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