あなたが作るおいしいごはん【完】
永遠にあなたが作るごはんを…。
***
「……和亮さん…ごめんなさい。
酷い事を言ってしまったうえに
私…昔の事…覚えていなかった。」
話を聞いて熱い涙が頬を伝う中で
私は彼に頭を下げて謝った。
『…萌絵?どうして謝るの?』
彼は私の顔をあげさせると
流れる涙を拭いながら
私の顔を覗き込んだ。
私は泣きながら答えた。
「…言われるまで覚えてなかった。
私がそんな事を言ってたなんて…。
私の言葉があなたの人生も
運命も変えてしまったのに
あなたは私の言葉をずっと忘れずに
努力や苦労を重ねて
今の地位を掴み取ったのに
肝心の私がそう言った事を
何も覚えていないなんて…。
…和亮さん、ごめんなさい。
今まで本当にごめんなさい。
酷い事言ってごめんなさい。
無神経でごめんなさい。」
自分が嫌になる。
本当に何も覚えていないなんて。
彼は私の言葉を胸に刻み込んで
夢を叶える為に努力を重ねたのに。
なのに、酷い事まで言ってしまった。
すると
『…「ごめんなさい。」はもういい。
「ありがとう。」が俺は欲しい。
謝らなくていい。
覚えていなくて当然。
だから、これからは覚えていて。』
そう言って彼は少し体を屈ませると
座ったままの私をそっと抱き締めた。