あなたが作るおいしいごはん【完】

何度抱き締められても温かくて優しい。

彼の繊細な手が私の頭を撫でて

安心させてくれる。

こんな私なのに大切に想ってくれる。

今まで覚えていなかった私を

それでも抱き締めてくれる。

「…じゃあ、ありがとう。
和亮さん、ありがとう。
私の言葉を覚えていてくれて
ありがとう。
もう、絶対忘れない。
絶対に迷わない。
私は一生あなたについていく。
今まで支えられなかった分
あなたを支えていく。
私はあなたと家族になりたい。
ずっと永遠に
あなたのご飯食べたい…。

お腹の子と一緒に…。」


私は精いっぱい

彼の背中に腕を回してしがみついた。


『…ああ…ずっと一緒にいよう。
俺達は母親がいなかったから
寂しい気持ちは良くわかってる。

忙しくても絶対に協力するから
絶対に頑張りすぎるなよ。
一人で抱え込むなよ。

萌絵は俺の夢を導いてくれた
一生大切な人だから
俺は萌絵を一生甘やかして
守ると決めてるんだ。』

そう言って彼は

私の体をそっと離すと

ジャケットの内ポケットから

何かを取り出して

私の目の前で広げた。

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