あなたが作るおいしいごはん【完】

私の目の前に広げられたのは

婚姻届だった。


夫の欄には押谷和亮

妻の欄には浅倉萌絵


保証人の欄には

お互いの父親の名前が書かれている。


昨夜見せられた時

既に彼の名前と

お互いの父親の名前が

記入されていた事に驚いたけど

『…実は政略結婚の話を
2人から伝えられた時に
この婚姻届を見せられて
既に保証人の名前が記入されてた。
『…僕達は冗談ではなく
本気だから渡しておく。
和亮君…萌絵を一生よろしく。』
そう言って渡された時は
いつかちゃんと想い合えた日に
必ず出したい。
その日が早く来て欲しいと
いつもそう思っていたから
……凄く嬉しいよ。』

妻の欄に記入する私を見ながら

2人の父親の強引さを思い出した彼が

苦笑いしていた姿を思い浮かべた。

彼は私の前に広げると

『…やっとこの日が来たって
萌絵が俺の妻になるんだって思うと
俺の戸籍に入ってくれるんだって思うと
責任感じるけど、迷いはないよ。
ずっと大好きだったから
ずっと愛していたから
……待ち遠しくて堪らなかった。』


そう言いながら微笑み

すぐ内ポケットにしまった彼は

『…ちょっと待ってて。』

と言って私から離れた。
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