あなたが作るおいしいごはん【完】

彼はスタジオの角に置いてある

大きな冷蔵庫を開けて

何かがのせられた大きめのお皿を

取り出した後

両手でそのお皿を持って

こちらに戻って来た。


「………?」

私の目線からは側面しか見えないけど

少し平たく出来ていて

白い生クリームのようなモノが

塗られていた。

彼は私の近くの調理台に置くと

もう一度私の前に立って

私を見下ろした。

「…あっ、あの…これは?」

私が指差すと

『…《バースデーどら焼きだよ》。
今年はどうしようかと思ったけど
お見合いの席も結納の席も
《どら焼き》だったから
誕生日は特別versionにしたくて
昨日ここに来て作ったんだ。
スーパーで菊田に会って
“是非手伝わせて欲しい。”と
頭下げてくるから
少し手伝って貰った。』

そう言って彼は微笑みながら

私の手を引いて

ゆっくり立ち上がらせると

『…萌絵…誕生日おめでとう。
俺からのプロポーズだよ。

……受け取って欲しい。』

と、言って

生クリームに塗られた

《バースデーどら焼き》の

正面を見るように私に促した。

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