あなたが作るおいしいごはん【完】

＊＊＊

『……今すぐAホテルへ来てくれ。
今運転手の飯田(いいだ)さんが
迎えにそちらに向かってる。
お前が昔世話になった人が来ているから
会いたいそうだ。
粗相のないように
普段着でなく良い服に着替えて
待っておけ…いいな！？』


父からの突然の電話の内容に

その人が一体誰なのか聞いても

『…説明は全部後だ。
とにかく着替えて準備して
飯田さんを待ってろ！！』

そう言われて電話を切られてしまった。


Aホテルから自宅までは

車で15分〜20分の距離。

いけない！！今ノーメイクだ！！

着替えして来いと言われてるから

時間がない！！急がなくちゃ！！

私は借りた本を部屋に戻し

クローゼットから急いで

冬物のワンピースを取り出した。

素早く着替えて

メイクもパパッと済ませて

携帯をバッグに入れて

コートに袖を通した。


階段を降りたところで

インターホンが鳴り

モニターで飯田さんと確認すると

下駄箱から出したブーツを履いて

玄関の戸締りをした私は

案内された車の後部座席に乗り込んだ。