あなたが作るおいしいごはん【完】

「…お待たせして申し訳ありません。」

その場で正座して頭を下げた私に

『…いやー、萌絵ちゃん。
あけましておめでとう。
こちらこそ新年早々に悪かったね。
いやー、靖先輩。
萌絵ちゃんは本当にますます
綺麗なお嬢さんになられて…。』

うん!?靖先輩!?

聞き覚えのある声が上座から聞こえた。


父の事を『靖先輩』と呼ぶ人は

あの人しかいない。

私は顔をあげた。


…やっぱり。

父の向かい側に座っていたのは

不動産業を経営している

父の大学時代の後輩で長年の友人の

押谷秀和社長だった。


私は首を傾げた。

なぜ?秀和社長がここに?


もしかして

お世話になった人、会わせたい人って

秀和社長の事!?


確かに昔

私と弟の靖英は押谷家には

とてもお世話にはなったけど

秀和社長はだいぶん前に

父の会社で顔を見てるから

何で今さらここで顔を合わせるのかが

理解出来ずに黙っていると

『…萌絵。
いいからここに座りなさい。
いつまでもそこにいると
和亮君が挨拶出来ないだろ?』

父が隣の座布団を

トントンとすると

私に座るように促した。

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