あなたが作るおいしいごはん【完】
出来たての粒あんで
私の大好きな
《どら焼き》を作ってくれた。
本当なら嬉しいのに
今は気になる事が多過ぎて
ここで呑気に2人で
どら焼きとお茶でゆっくり…なんて
そんな心の余裕など…私には…。
「…あっ、あの、カズ兄ちゃん!!」
私は慌てて彼の名前を呼んだ。
すると
『…今、萌絵ちゃんが
言いたい事は凄くわかってるよ。
突然の事に驚いたよね?
俺だって…新年早々に
この話は突然で驚いたからね。』
お茶を入れ替えている彼が
私にチラリと視線を向けた。
カズ兄ちゃんも突然聞かされたの!?
「……。」
黙った私に
『…今の萌絵ちゃんの心情で
“落ち着け”なんて言っても
余計に苛々するだけだとわかってるよ。
でもね…どんなに慌てて、動揺しても
事態は覆らないよ。
…それだったら、今ひとまずは
一緒にどら焼き食べて、お茶飲んで
他愛ない話をして……落ち着こうか?』
そう言って彼は私の前に
新しいお茶が入った湯呑みを差し出すと
『…まずは一口食べてみてよ。』
と、私に食べるように促した。