あなたが作るおいしいごはん【完】
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このお見合いと婚約話は
以前、秀和社長の会社が
一時期経営危機に陥って
父が資金援助を申し出た際に
取り交わされていた
約束の一つだったと
私は今、彼の話によって知らされた。
「……ごめんなさい。
父が秀和社長に厄介で迷惑な約束を
させてしまったみたいで…。」
彼にお菓子を頂いて
甘い物を摂取して
さっきよりは心身が
若干ほぐれかけていた私は
冷静に話を聞ける状態になったものの
そんな約束がいつの間にか
知らないうちに
父親同士で取り交わされていた事に
唖然とするしかなかった。
『…いいんだ。別にそれは
靖雄さんだけの希望じゃなくて
親父も希望していた事らしいし
無条件で資金援助を受ける訳には
いかないと親父も思っていたらしいから
そう言う話になったんだと思う。』
彼は締めていたネクタイを
若干緩めながら再び私に視線を戻した。