あなたが作るおいしいごはん【完】
《どら焼き》のように
決して甘くなかった私の恋愛。
小豆のように栄養豊富にならず
寧ろ栄養が逃げていくように
貴重な青春を無駄にした。
まだ高校生なのに
もうドロドロを経験した。
なかった事にしたいほどの話だから
彼が知っている、聞いているって事は
かなり恥ずかしい事。
「……。」
突然のお見合い、婚約話に続いて
そんな過去をも知られてしまった事に
穴があったら入りたくて堪らない。
こんな私はやっぱり
彼…カズ兄ちゃんには相応しくない。
ましてや4月から
料理番組へのTV出演が決まってるなら
7歳も年が離れてる未成年で
どうしようもない男性と
お付き合いしていた
4月からも学生の私と…なんて。
「……ごめんなさい。
やっぱりカズ兄ちゃんに
私は相応しくないよ。
カズ兄ちゃんの心を汚して
料理研究家としての肩書きに
傷をつけ……。」
そう言った時
『…だから僕は“構わない”って
さっきも言ったでしょ?』
お茶を啜っていた彼は
湯呑みを置いて私を見つめた。