あなたが作るおいしいごはん【完】

「……恩?お父さんに?」

彼の言葉に首を傾げると

『…ああ。
俺は中学生の時に
この職業に就こうと決心した。
でも、会社継がせたい親父から
反対され続けて口論が絶えなかった。
そんな時に仲裁に入ってくれて
俺の夢を後押ししてくれたのが
他でもない…靖雄さんだったんだ。』

「…お父さんが!?」

そんな話は初耳だった。

お父さんがそんな事をしていたなんて…。

驚く私に彼は頷いた。

『…俺の夢を否定せずに
耳を傾けてくれたのも
親父の会社を継がなくてもいいように
親父を説得してくれたのも
俺が親父の会社を手伝いながら
夢を叶える事を提案してくれたのも
……靖雄さんだったんだ。』


「…そうなんだ。」

意外過ぎて言葉が出てこなかった。


『…靖雄さんのおかげで
親父も納得して認めてくれた。
以来、俺は
夢を叶える為に一生懸命だった。
ハードだと思う時もあったけど
大好きな事をたくさん学べただけでなく
親父の苦労を真近で見て
知らなかった事を知る事も出来た。
だから俺は、靖雄さんに対しては
……感謝してもしきれないんだ。』

彼はそう言って微笑みを浮かべた。
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