あなたが作るおいしいごはん【完】
…そう言う事か。
彼は私との婚約を受け入れたのは
父に恩返しして
役に立ちたかったからなのね?
複雑に感じ始めた想いとは裏腹に
彼は話を続けた。
『…全く知らない子なら抵抗はあるけど
萌絵ちゃんだったら
小さい頃から知っているし
俺は別に萌絵ちゃんを嫌いではない。
…だから…結婚しても構わないよ。』
「…そんな理由で決めて
カズ兄ちゃんは後悔しないの?」
口を開いた私に
『…後悔?…そんなのないよ。』
彼はそう言い切った
『…ただ、萌絵ちゃんが
今だいぶん戸惑ってるだろうし
短大へ進学するのも知っている。
俺も料理教室に加えて
4月から料理番組に2年契約してて
仕事が今より増える。
だから予定通り婚約はして
同棲もするけど
入籍に関してはすぐにはせずに
短大卒業と番組の契約満了辺りを
考えているよ。』
「…えっ!?同棲!?」
新たに聞かされた意外な言葉に
私は再び驚かされた。
『…そうだよ。
結納後に萌絵ちゃんは
俺の住むマンションに引越して
同棲する事も既に決まってるよ。』
サラリと話す彼に
私はもう目を見開くしかなかった。