あなたが作るおいしいごはん【完】
私の事なんて好きじゃないのに
彼はこの日の為に
立派な婚約指輪まで
きちんと用意してくれていた。
『…少し庭の景色を見よう。』
父達や靖英が盛り上がっている中で
ぎこちない私を察した彼は
私の手を引いてそっと立たせ
縁側に出られる障子を開けると
私を出してくれた。
「『………。』」
しばらくの間縁側に座って
目の前に広がる日本庭園を
2人きりで静かに眺めていた時
『…萌絵ちゃん、手を出して。
気に入ってくれるといいけど。』
彼が差し出した私の手に
紅色の小箱をそっと置いた。
『…俺の生徒さんの知り合いで
【Dear Lovely Angels
(親愛なる可愛い天使達)】って
ブランドを立ち上げている
守谷さんと言う
ジュエリーデザイナーがいるんだ。
話を聞いたら興味がわいて
その生徒さん経由で
守谷さんを紹介して貰って
顔見知りになれたから
この日に間に合うように
特別オーダーで作って貰ったんだ。』
そう話しながら
左手薬指にはめてくれたその指輪は
私の指に素早く馴染むように輝いた。