あなたが作るおいしいごはん【完】
気づけば日も暮れかかり
30分間の放送が終了したと同時に
“ピーッ、ピーッ、ピーッ”
炊飯器のご飯が炊ける音がした。
TVを消してテキストを閉じた途端
“ピーンポーン”
タイミング良くインターホンが鳴り
すぐに“ガチャガチャガチャ”と
玄関の鍵が開く音がした。
この音は…わかってる。
同棲している彼氏
正しく言えば
一応私の婚約者になる人が
仕事から帰ってきた音だ。
…今日は珍しく早いな。
彼が廊下を歩いて
リビングに近づく足音が聞こえると
私はその場で立ち上がった。
「…萌絵…ただいま。」
リビングに入った彼は
バッグを置き
ジャケットを脱いで椅子にかけると
私のそばにやって来た。
微かな微笑みを浮かべるその表情は
本当に素敵だといつも思ってる。
「…おかえり、カズさん。
お疲れ様でした。
今日は早く打ち合わせが終わったの?」
私は彼に微笑みながら尋ねた。