あなたが作るおいしいごはん【完】

彼が持っている

分厚い手帳を見せて貰った時

几帳面な彼の綺麗な字で

タイムスケジュールが

ビッチリと書かれていた。

「……カズ兄ちゃん、大変なんだね。
辛いとか思った事ないの?」

彼は本当に忙しい人だと思っていたけど

ここまで忙しい人だったなんて…。

するとその質問に

彼は優しく微笑むと

『…まだ料理研究家として
デビューしてなかった頃
心が折れそうになった事はあったかな。
焦りも不安も一度あったかな…。
…でも今は全然そう思わない。
寧ろ、この忙しさが
意外と楽しかったりもする。
“今だから出来る。”
“今しか出来ない。”と思うからね。』

そう言って彼は手帳を仕舞った。

「…凄い…ポジティブなんだね。」

何だか羨ましいと思えてしまう。

『…そうだね。
大好きな事を職業に出来たからね。
だからしんどいとか
疲れたりとかはないかな。
後は美味しいご飯を
バランス良く食べてるつもりだからね。

…さて、お姫さま。
今日は何が食べたいですか?
久々に今日もゆっくりと作れるよ。』

彼は立ち上がって

私には優しく微笑みながら

エプロンを身につけた。







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