あなたが作るおいしいごはん【完】
鼓膜を揺らすような彼の言葉に
…ドクンドクンと
胸の高鳴りはますます加速する。
黙っている私に痺れを切らしたのか
『…もう一度言うよ。
俺は“萌絵”って呼びたい。
だから…萌絵は俺を
“和亮”って呼んで欲しいんだ。』
彼は頬に触れていた手を離すと
そっと優しく私の両肩に手を置いた。
…そんな…いきなり呼び捨ては無理。
ずっと“カズ兄ちゃん”だったから。
私は恥ずかしくなる気持ちを抑えながら
『……“萌絵”……でいい…ですよ。
でも…急に呼び捨ては…出来ないから
せめて……私は…“カズさん”って
今は…そう…呼ばせて欲しいです。
いつか…呼べるように…しますから。』
ゆっくり言葉を口にすると
『…そう……わかったよ。
その代わり俺の事を萌絵が
心から好きになった暁には
絶対に呼び方は
“カズさん”から“和亮”に…だよ。
………いいね?』
彼はそう言って私に念を押すと
『…約束のキスをしようか?』
と、私の方へと
顔をゆっくりと近づけてきた。