純愛関係図―It is not love―




「ん」


「……ありがと」




 遥陽から渡されたわたあめを、一口食べる。


 ねぇ矢崎……。




 私はね、矢崎が好きなんだよ――。






「どうかしたの?茜」


「えっ、いや…なんでもないよ」




 結月が私の顔を覗き込みながら心配そうに聞いてきた。


 心配かけちゃだめだめ。



 この夏祭りで矢崎に言うんだ。


 好きだって。



 私の本当の気持ちを伝えるんだ……!






「金魚すくい行こうぜ?」



 矢崎がすぐ近くにある屋台を見て言った。


 矢崎の声を聞くたび、心臓がトクン…って甘く響く。




 気づいてよ…矢崎。矢崎、私のことよく見てるんでしょ?

 伝える前に気づいてよ。


 私が好きなのは矢崎。あんただよ。





 胸が甘く溶けたりギュって締め付けられたり。

 忙しい鼓動に、私は“いつも通りの私”になれなかった。






< 206 / 298 >

この作品をシェア

pagetop