純愛関係図―It is not love―





 あと少し。


 あと少しの時間を、私と遥陽は笑顔で埋めた。






 そして、家にたどり着いた。



 遥陽は惜しむように少しの間、手を離さなかった。






「……明日からは幼馴染としてまたよろしく」




「うん。またね、遥陽」





「お前のこと大好き“だった”」







 わざと過去形にして言った遥陽は、言ったあと涙をこらえるように歯を食いしばった。






「私、遥陽の好きな人になれて嬉しかったよ」





 私がそう言うと、遥陽は歯を食いしばるのをやめて、覚悟が決まったかのように柔らかく微笑んだ。






「……じゃあな、茜」


 その言葉と同時に離れた私たちの手のひら。




 さみしさと切なさが心を埋め尽くした。


 恋人終了の証。幼馴染再開の合図。






 ――遥陽、好きになってくれてありがとう……。


 涙を我慢するのに精一杯で言えなかった言葉を、私は心の中で呟いてから家の中へと入った。







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