純愛関係図―It is not love―



 教室に入ってきたのは、同じクラスで遥陽の親友の矢崎 要【ヤザキ カナメ】だった。


 私の涙に気づき、慌てた様子で近づいてくる。



「だ、大丈夫。ただ…目にゴミが入っただけだから」


「ホントに大丈夫か!?」


「うん」



 女の涙に弱いのかな?

 まだ慌ててる…。


 クスッ。


 そんな矢崎に、私は笑ってしまった。



「なに笑ってんだよ」


「いや…だって……ふふっ。慌てすぎ」



 その笑いで、涙が引っ込んだ。



 矢崎と話したのは、数えられるくらい。



 遥陽と同じサッカー部で、クラスのムードメーカー的存在。

 無造作に整えられた焦げ茶の艶のある髪、男子なのに大きな瞳。

 「元気系イケメン」って、クラスの女子が言ってた気がする…。




「…ま、元気そうでよかった。涙見たとき、びっくりしたんだからな!」


 忘れ物を取りに来たのか、矢崎は自分の机の中をガサゴソと探しながら言った。


 「あ、あった!」と大きな声で言って、その見つかった忘れ物をポケットに入れた。



「大丈夫って言ったのに。慌てすぎなの、矢崎は」


「慌てるだろ、普通」




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