愛すと殺すと

昔々。
ある孤児がおりました。
三人まとめて両親が他界して、まとめて親族もなにもいないから


『し』と『せ』と『つ』に行き――


「そして、壊れました」


たった三歳で。

中学二年まで。



「……」



菅原は目の前で、そして自分のせいで最愛の人を亡くした。


そして自分のせいだと攻め続ける。


だから、異常なまでに布留に執着する。


『愛してる』


それだけの理由で、執着する。



「目の前で逃した魚をまた逃さないように、かな」


ネイルを施した手のひらを見つめた。


…その魚も壊れてる。


心臓がない魚は、長くは持たないよ。


友達もなにも作らないで、延々と菅原の意に沿うように生活する。


それしかないのだ、アイツには。


人間の本能を歪めるまでの強い気持ち。



「わっかんねーなー…」



ボロボロになっていく、アイツの体。


見殺しにだけはしたくない。



でもたぶんいつか、殺すだろうな。


菅原が人を殺すのは初めてじゃないし。



「…それも、布留が指示したんだっけ」


それが『愛』だのなんだの言うなら、間違ってるよ。



◇◇◇
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