愛すと殺すと
「こ、ないで…ください」
「――っ」
「止めて、ください。
もう、止めっ……」
何に向かってか、彼女は身を抱き締めて震える。
「痛いの…ぃやぁあ…」
ぶんぶんと首を降り、今度は頭を抱える。
「お、にぃ…ちゃ…」
「どういうことだ先生」
明らかな異常っぷりに戸惑いを隠せない。
だって、こんなの、まるで…
「まるで、小さい頃みたいな…」
「正解」
休日だからか、白衣を着てない先生。
その先生は千晶にゆっくりと近づき、説明してくれる。
「美澤の話によれば、どうやら音楽を聞かせてしまったそうだ」
「…音楽?」
「洋楽が美澤の着メロで、たまたまかかってきたそうだぜ?」
節、あんだろ、と軽く笑いながら。
洋楽。
それは、千晶が壊れる合図。
「いきなり奇声を発し、倒れた――以来こんなだ。
何を話しかけても、嫌だ怖い助けて痛い、しかいわない。
見覚えとかあるか?」