愛すと殺すと
「み、みぃ――…」
先生が目を見開く。
驚いたのだろう。
「ずっと、ずっと好きだったの」
そっと離れながら。
「菅原千晶にいつもいつも甘い顔をさせていて、いいなって思った。
同じクラスなのに振り向いてくれなくて、菅原千晶にしか向けない笑顔を私に向けてほしいっていつも思ってたの」
今更気づいた。
美澤は髪を下ろして私服にすると、びっくりするほど艶やかで美しいことに。
「あの優しい笑みが無性に欲しい。
ねぇ布留くん――ううん、陽くん。
へへ、心の中でずっと陽くんって呼んでた…。
あのね、陽くん。
私と付き合ってほしいの」
すがるような目。
「菅原千晶と義務感でいて、離れられない?
そっか、優しいもんね陽くん。
私は気にしないよ。
気持ちだけでも私に向いてたら、何にも不満に思わないから、だから――」
また詰め寄ってきて、俺の胸に収まった。
なんだかいい匂いがする。
「付き合って、お願い…」
日だまりの猫みたいに目を細めた。