愛すと殺すと
◇◇◇

喧騒に囲まれた教室に戻る。

「ね、ねえ布留くん…?」

そう呼ばれて振り返ると。

ビクビクしてる女の子が一人。

「あの、えと、菅原さんが」

「あぁ千晶か。ありがと」

わざわざ伝えに来てくれたらしい。

つかそんなにビビるな。


俺はクラスではいわゆるボッチ。

理由は素っ気ない態度と、異常なまでについてくるコイツ。



「陽!陽ったらどこにいたの?」



千晶のせいだ。


授業と授業の間の10分間の休みに、隣のクラスなのを利用してくるレベルだ。


理由は一つ

廊下で会話をするため。


「どこにって?」


「だって一時間目に来たらいないし――あ、これか」


腕をまくったままだったから、包帯に気づいたらしい。


「酷かったの?」

「まあ」

「ふーん」


悪びれた様子もなく。


「陽は、山本先生が好きなの?」


「は?ちげーよ。千晶」


「だよね。よかったあ」



ニッコリ笑う千晶は、本当にかわいいと思う。


「千晶もね、陽大好き」



1日に何万回も聞く、その言葉。


もうなんとも感じなくなってしまった。



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