愛すと殺すと


嫌だ。




どうしようもなく、嫌だ。




「…くっ、」




おかしいな、今まで俺は何をしてたんだろう。


俺が愛されてるのは、全部俺が鳳紀の代わりだからじゃないか。


鳳紀の代わりに、愛して守って。



千晶が救われるのは、結局鳳紀でしかないのだ。



どうしようもなく嫌だった。


好きだと自覚しなければよかった。


前の俺なら、躊躇なく鳳紀を真似る。



けど、嫌だった。



それは千晶には俺が映ってないことになる。


千晶には、結局鳳紀しかいらないのだ。


千晶はいつまでたっても鳳紀を欲していて――






「……ははっ」






なぜだか笑えてしまった。



一方通行の愛、それを今更ながら拒絶した自分、自覚した自分、愛してしまった自分――



どれかはわからない、けれど

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