愛すと殺すと
「千晶」
頭を撫でる行為は、昔から千晶が最も好きな行為だった。
「俺ね、好きな人ができたんだ」
声が震えた。
嫌だ、千晶を失いたくない。
でも好きになってしまった。
裏切る形で、好きな人を作ってしまった。
千晶は、俺がいなくならないように殺すだろう。
何回も繰り広げられてきた日常が、今更怖くなった。
千晶と離れたくない。
好きだから。
一人にしたくない。
俺以外の人間が千晶に餌付けするなんていやだ。
それ以前に千晶は一人になっちゃうか。
大丈夫かな、やっていけるかな。
せめて家事だけでも教えるべきだった。
菅原の家で、また食事を取らなくなったらどうしよう。
離れたくない、よ――…
「…くっ、う…」
ポタリ、滴が千晶の肩に落ちた。
そして、震える口を開けて。