愛すと殺すと
「…陽?」
モゾッと肩の少女が動いた。
「泣いてる」
しなやかな細い指が、俺の頬に触れた。
千晶から触れてくれたのが嬉しくて、もっと涙が出てしまう。
「…男の子なのに、ダメだよぉ…」
えへへ、と笑って。
ワンピースの裾で、俺の涙をしきりに拭う。
ちらりとリストカットが見えた。
「泣かないでったら」
今度は俺が頭を撫でられる。
「…反対だな…」
「うん、だから今日は、撫で撫での日にしよっか」
いつかの映画みたいなことを言った。
それほど平然としてたから、逆に呆気にとられる。
ちゃんと口に出したんだ。
死刑宣告を、きちんと。
なのに行動ひとつ起こさないって、どーゆー事だ?