愛すと殺すと
靴箱からそのまま一階の保健室へ向かう。
「なんで行くの?」
「…あぁ、そっか」
彼女は覚えてないらしいのだ。
記憶は洋楽を聞いて胸がわーってなった、までらしい。
わーって何?と聞いても、なぜかへんたーいとか言われて教えてくれなかった。
ただ、と嬉しそうに笑って。
『ただ、頭を撫でてもらってからは、全部覚えてるの』
不思議だね?と笑う彼女が可愛かった。
『…それはさ、俺だった?』
『え?陽以外誰がいるの?』
『だよね…』
まさか鳳紀に移ったのでは、とか言えるわけない。
「ねぇー?なんで?
山本になんで会いに行くの?」
「千晶が昨日倒れた時に世話になったから、お礼にね?」
「…ふぅん」
ちょっと気に食わないらしいけど、自分絡みだし許す、みたいな態度だった。
「…えっと」
自販機の前でちょっと迷い、やはり先生ならこれかと購入を決める。
「千晶もいる?」
「じゃあねー、陽と半分こするから、陽の好きなのがいーなー」
そう言われても思い付かなかったから、取り合えず千晶の好物にした。