愛すと殺すと


「…え?」


さすがに驚いたのか、目を真剣にさせた。




「俺、今まで千晶の解釈は

『俺に好きな人ができたら』

だと思ってた。


けど本当は、

『千晶以外を好きになったら』

だったんだよ。


よくよく考えれば解ることなんだけど、半ば洗脳状態だったみたいでさ、俺。


千晶のため千晶のためって、バカみたい。

逆をいえば、千晶のせいになるのに」


ちょっとした、勘違い。


誰も好きにならないで、と延々に言われたら、こんなこともあるのだろうか。


「『守ってやってくれ。千晶は女の子だから。
だから愛してやってくれ』」


先生がピクンと猫みたいに反応する。


「これが、鳳紀の遺言でした」


思い出した。

否、片時も忘れたことはない。


あの光景、景色、出来事――


「子供には重すぎんな、それ」


はぁ、とため息をついて。


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